不安と恐怖-アゴラ・フォビアとタナト・フォビア-

 一般に不安とは、漠然とした対象のないもので、自律神経系が亢進し、動悸、息切れ、過呼吸、頻尿、血圧や脈拍の上昇がみられ、重症な方はパニック発作となり、救急車で搬送される方もいます。

一方、恐怖とは、対象が認められる強烈な不安です。対象は様々で、高所、閉所、乗り物(バス、電車、飛行機など)、逃げ場がない空間で生じやすい傾向があります。

 ところで、ヨーロッパの田舎で毎週末、公園で物々交換が行われている風景をみたことがあります。そこでは、人がたくさん集まって、時計、宝石、小道具、鏡などが交換されたり、売買されていました。その空間を「アゴラ」と呼ばれていますが、古代ギリシャの「人々の集まる場所」「広場」「市場」を意味する言葉で、ポリスの中心的な公共の空間でした。アゴラはラテン語で「みんなが集まる場所」をいう意味です。すなわち、人が集まる場所に行きたくない、行けない病をアゴラ・フォビア agoraphobia と言います。比較的よくみられる恐怖症で、薬物療法に反応する例もありますが、行動療法的なアプローチが有効な例も多いようです。

 また、タナト・フォビア tanatophobia とは死恐怖症で、自分自身の死や死の過程に対して、日常生活に支障をきたすほど異常かつ持続的な恐怖を抱く病です。ギリシャ語の「死(タナト)と「恐怖 フォビア」が語源です。この恐怖は、うつ状態に陥ったときに生じやすく、もっとも深刻な症状です。これまで、数人の方の治療を経験したことがあります。

 臨床的には、不安anxiety は抗不安薬である程度軽減されますが、恐怖 phobiaになると、抗不安薬に抗うつ薬を追加してあげる必要性が生じます。

不安は辛いものですが、恐怖はさらに不安のレベルが高く、いずれもあるきっかけから生じているようです。しかし、あるきっかけから、どちらも消失していきます。なぜでしょうかね、よくなるものです。しばらく、闘ってみるしかないですね。

(2026年2月24日 佐藤 武)

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