身体化障害と身体症状症とは?
WHOによる診断ガイドライン「ICD-10」における身体化障害は、さまざまな身体の不調が長く続くのに、これといった病気が見つからない障害です。アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では「身体症状症」として解説されています。
症状は、消化器系の不調(痛み、おくび、嘔吐、悪心など)や、皮膚の不調(かゆみ、灼熱感、うずき、しびれ、痛み、できもの)がよくみられます。性に関する訴えや、月経に関する不調を訴える人もいます。それらの症状は多発的で繰り返し起こり、しばしば変化していきます。
患者さんが精神科を受診するまでに、通常、数年間はかかります。ほとんどの場合、かかりつけ医と専門の医療機関の両方を受診しており、長く複雑な病歴を持っています。その間に多くの検査が行われていますが、結果が陰性だったり、手術が無効だったりすることがあります。ただ、身体化障害は本当の身体疾患を持っている場合もあります。頻繁な薬物治療をしたために、しばしば薬物(通常は鎮静剤と鎮痛剤)への依存と乱用が生じます。
また、精神面では著しい抑うつと不安が存在し、治療が必要な場合があります。
ところで、かつては、DSM-5では、ICD-10と同様に、身体化障害として、診断名を定義していました。しかし、精神科の病名は、なんども修正がなされています。これは政治と同様で、ICD-10はヨーロッパ中心で用いられている診断が概念、DSM-5は米国が自ら作成している概念。日本で保険病名として、使用しているのは、ICD-10です。どちらでもよいのですが、米国は、自分たちが優位に立つように変えていく傾向があり、統計学を駆使して、新しい診断名を作成しています。かつて、発達障害の中で、アスペルガー症候群を1つの診断概念として位置づけていましたが、米国は、アルペルガー症候群を削除しました。
私は、診断学と統計調査で学位(医学博士)を取得しましたが、いかに、臨床の現場では役に立っていないような気がします。病名にあまりこだわらずに、その悩める人の気持ちを理解してあげることが大切だと思います。
2026年1月22日 佐藤 武
